よくある質問:フルミスト点鼻液
製品に関して(開発から安全性確認と発売まで)
点鼻薬としてのインフルエンザワクチンの話
インフルエンザは、毎年冬季を中心に流行するウイルス性の急性呼吸器感染症で、特に小児や高齢者では重篤な合併症を引き起こすことがあります。
小児においても、インフルエンザ脳症など重い症状が報告されており、予防が非常に重要です。フルミスト点鼻液は、日本で初めて承認された鼻から投与するタイプの生ワクチンで、注射の必要がなく、痛みを伴わないことから、心理的・身体的負担の軽減が期待されます。
このワクチンは、弱毒化されたインフルエンザウイルスを鼻腔に噴霧し、自然感染に近い形で免疫を誘導することで、インフルエンザの発症や重症化を予防します。
2023年には、国内の臨床試験を経て、2歳以上19歳未満の小児を対象に「インフルエンザの予防」を目的として正式に承認されました。対象年齢や使用にあたっての注意点もありますので、接種をご希望の方は医院までご相談ください。
ワクチンの特徴は?
フルミスト点鼻液は、日本で初めて承認された、鼻から投与するタイプの弱毒生インフルエンザワクチンです。注射ではなく鼻に噴霧するため、針の痛みがなく、お子様への心理的・身体的な負担が少ないことが特長です。
本剤に含まれるワクチンウイルス株は、低温で増殖しやすく、体温に近い温度では増殖しにくく、さらに弱毒化されているため安全性が高いとされています。
実際の接種により、鼻やのどの粘膜を通じて自然感染に近い免疫反応が誘導され、感染予防効果が期待できます。日本で行われた2~18歳の小児を対象とした試験では、インフルエンザの発症を約29%減らす効果が確認されました。主な副反応としては鼻づまり、鼻水、咳、のどの痛み、頭痛などが報告されており、接種後数日間の観察も大切です。
製造に鶏卵が使われています
フルミストは、製造の過程で「鶏卵(けいらん)」を使っています。 そのため、これまでに鶏卵・鶏肉・その他鶏由来の食品などで強いアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こしたことがある方は、フルミストの接種はできません※。 また、鶏卵や鶏肉などでアレルギーの心配がある方は、接種できるかどうかを医師が慎重に判断する必要があります。
体調や体質などをしっかり診察したうえで、予防接種の必要性や副反応の可能性、効果についてきちんと説明を行い、ご本人や保護者の同意をいただいてから、注意深く接種を行います。
※(出典:日本ワクチン産業協会「予防接種に関するQ&A集2024」)
臨床試験における主な副反応、臨床検査値異常に関して
フルミストで10%以上に認められた副反応は鼻閉・鼻漏(59.2%)、咳嗽、口腔咽頭痛、頭痛でした。
1~10%未満に認められた副反応は鼻咽頭炎、食欲減退、下痢、腹痛、発熱、活動性低下・疲労・無力症、筋肉痛、インフルエンザでした。
治療に関して(少し難しい内容が含まれます)
まずはじめに:効能又は効果、用法及び用量
●効能又は効果
インフルエンザの予防
●用法及び用量
2歳以上19歳未満の者に、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧します。
同時接種や接種間隔などに関連して
同時接種 医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができます。
また、『予防接種ガイドライン2025年版』(予防接種リサーチセンター)の「異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔」には、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンと注射生ワクチン、経口又は経鼻生ワクチン、不活化ワクチン・トキソイド・mRNAワクチンに「間隔の規定なし」という記載があります。
接種前に注意すべきことは?(鼻をかんでおく??)
接種前に鼻をかんでおく必要性に関する規定は電子添文にありません。
フルミスト接種前に必ず問診、検温などをふくめた診察(咽頭視診等も)によって健康状態を調べますので、健康状態が気になる場合には随時ご相談ください。
では、鼻閉(はなづまり)がある方は?または接種前に泣いてハナミズ出たら??
原則的に『接種される場合、噴霧したフルミストの成分が鼻の粘膜に接触するような状態での接種』を推奨します。つまり、【健康で鼻みずが普段は認めていないにもかかわらず、診察室で泣いたため鼻水が大量に流出した状態など】での接種には、慎重な判断が必要になります。
なお、2025年9月時点で、鼻閉がある方を対象としたフルミストの臨床試験は実施されておりませんので、有効性に関する情報は持ち合わせておりません。
『米国予防接種諮問委員会の勧告(2024~2025シーズン)』では、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(FluMist)に関して「鼻づまりがあり、ワクチンが鼻咽頭粘膜に到達しにくい場合は、病気が治まるまで接種を延期するか、代わりに別の適切なワクチンを接種してください。」という記載があります。
引用文献:Grohskopf LA, et al.:MMWR Recomm Rep 2024;73(5):1-25
接種後に、すぐに鼻をかんでも問題はない?
フルミスト接種後、すぐに鼻をかむことで問題となった情報は入手できていないため不明です。 国内第Ⅲ相試験(J301試験)では、フルミスト接種後に、すぐに鼻をかむことに関する制限は設けておらず、2025年9月時点で電子添文でもフルミスト接種後、すぐに鼻をかむことに関する規定は設けられておりません。
接種後に、鼻をすすったり、のどに垂れたり、くしゃみをしたり、飲み込んでも有効性・安全性に影響はない?
フルミストを接種後に鼻をすすったり、のどに垂れたり、くしゃみをしたり、飲み込んだりした場合の有効性、安全性の影響を臨床試験では検討されておりません。
なお、インフルエンザウイルスの一般的性質として、pH3以下では失活するとされているため、飲み込んでしまった場合でも、胃酸によりウイルスは失活すると考えられています。
接種後の待機時間や注意すべき時間帯
接種後に、ショック(冷汗が出る、めまい、顔面蒼白、手足が冷たくなる、意識の消失)、アナフィラキシー(全身のかゆみ、じんま疹、喉のかゆみ、ふらつき、動悸、息苦しいなど)がおこることがあります。アナフィラキシーは通常接種後30分以内におこることが多いので、この間は施設内で待機するか、ただちに医師と連絡をとれるようにしておいてください。
接種後にインフルエンザ迅速検査が陽性に出ることがある?
接種後一定期間は、本剤由来のワクチンウイルスがインフルエンザの迅速検査で陽性反応を示す可能性があります。
国内第Ⅲ相臨床試験であるJ301試験(本剤608例、プラセボ302例)において、ワクチンウイルスによると考えられるインフルエンザの副反応が11例に認められ、このうち9例に本剤接種から2~8日後に受診した際の迅速検査で陽性反応が認められました。
安全性に関して
接種を受けることが適当でない方と、その理由について
次のように規定されています
1. 明らかな発熱を呈している者
2. 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
3. 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
4. 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者
5. 妊娠していることが明らかな者
6. 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
<設定理由>
1~3、6. 予防接種法施行規則及び予防接種実施規則に基づき設定
4. 本剤の欧州添付文書において禁忌に設定されていること及び日本国内の生ワクチンにおいて一般的に接種不適当者とされていることから設定
5. 本剤の妊婦への使用経験は限られていること、産婦人科診療ガイドライン(日本産婦人科学会、日本産婦人科医会)において妊婦への生ワクチン接種は原則禁忌とされていること及び米国予防接種諮問委員会(ACIP)勧告にて妊婦への弱毒生インフルエンザワクチンの接種は禁忌とされていることから設定
接種の判断を行うに際し、注意を要する方と、その理由について
電子添文には接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)として下記の記載があります。
1. ゼラチン含有製剤又はゼラチン含有の食品に対して、ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血管性浮腫等)等の過敏症の既往のある者
2. 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
3. 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
4. 過去にけいれんの既往のある者
5. 過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
6. 重度の喘息を有する者又は喘鳴の症状を呈する者
7. 本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのある者
8. 腎機能障害を有する者
9. 肝機能障害を有する者
また、以下の薬剤は併用注意となっており、服用中の方は注意が必要ですので、摂取前にはお申し出ください。
1. 抗インフルエンザウイルス剤(オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物等)
→本剤の効果が得られないおそれがあります。ワクチンウイルスの増殖が抑制され、本剤の効果が減弱する可能性があります。
2. サリチル酸系医薬品(アスピリン、サリチル酸ナトリウム等)、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸
→ライ症候群があらわれるおそれがあります。作用機序は不明ですが、サリチル酸系医薬品、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸においては、ライ症候群やインフルエンザ脳炎・脳症の重症化との関連性を示す報告があります。
「重要な基本的注意」とその理由について
1. 接種当日は過激な運動は避け、また、接種後の健康監視に留意し、体調の変化、さらに高熱等の異常な症状を呈した場合には、速やかに診察を受けてください。
2. フルミストは弱毒生インフルエンザワクチンであり、飛沫又は接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、ワクチン接種後1~2週間は、乳児や重度の免疫不全者との密接な関係を可能な限り避けるなど、必要な措置を講じてください。
<理由>
1. フルミストは安定剤としてゼラチン加水分解物を含むため、ゼラチンに対して過敏症の既往のある者においては、ショック、アナフィラキシーが発現するおそれがあることから設定されました。
2. 接種された者からのワクチンウイルスの水平伝播がまれに認められているため、乳児や重度の免疫不全者への伝播について注意喚起されています。
フルミストの接種によってインフルエンザを発症することがある?
フルミストの接種によってインフルエンザを発症することがあります。
国内第Ⅲ相試験試験において、治験薬接種28日後までに発現し、有害事象として収集されたインフルエンザは、フルミスト群で11/608例(1.8%)、プラセボ群で0/302例(0%)でした。
≪臨床試験における、ワクチン由来のインフルエンザウイルスが検出された方の経過≫
インフルエンザ様症状は、治験薬接種2~8日後に発現し、発現した症状は発熱(38.0~39.3℃)、鼻漏、咳嗽、口腔咽頭痛、頭痛などであり、精神神経症状、肺炎、脳症は認められませんでした。
抗インフルエンザ薬は11人のうち7人に投与されています。インフルエンザ様症状は3~12日で回復し、入院加療が必要となった被験者は認められませんでした。
